DIAN観察研究と、採取試料についての説明

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Dominantly Inherited Alzheimer Network (優性遺伝アルツハイマー・ネットワーク)(DIAN; U01AG032438)は、優性遺伝アルツハイマー病の発症について、検証済みの変異保因者と、自然発生的な対照群として非保因者の兄弟姉妹とを比較することで、研究を行います。DIANの全参加者は、包括的かつ最新の臨床、認知、遺伝、画像診断、バイオマーカーの研究手順によって長期的に評価され、全てのデータは、一般的かつ統一された基準によって収集され、中央のデータベースに入力されます。

DIANの具体的目標

  1. APP、PSEN1、またはPSEN2遺伝子にアルツハイマー病に関する既知の原因変異を持つ親の生物学的に成人した子供である方々(変異保因者および非保因者、無症候性および症候性)に関する国際、多施設共同登録を確立すること。そして、その後は標準的方法を用いて同一基準に基づき長期的に評価を行うこと。評価内容は以下とします。
    1. 臨床試験および認知試験のUniform Data Set(UDS)と、追加的な神経心理学的および性格指標
    2. Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)(アルツハイマー病ニューロイメジング・イニシアチブ)構造的(磁気共鳴映像法:MRI)、機能的(フルオロデオキシグルコースPET、またはFDG PET)、およびアミロイド撮像(ピッツバーグ化合物B、またはPIB)PETプロトコル
    3. ADNI研究手順に従い、DNA解析およびアルツハイマー病の予測的バイオマーカーの分析評価を目的とした、生体液(血液、脳脊髄液)の収集
    4. 検死体から採取した大脳細胞組織の、統一基準に基づく病理組織学的検査
  2. 無症候性の方を対象に、変異保因者と非保因者を比較し、認知症の発症前に、臨床、認知、脳撮像、アルツハイマー病のバイオマーカー指標がどのような順序で変化するかを策定します。
  3. 症候性の方を対象に、その臨床および神経病理学的表現型を、晩期発症型「孤発性」アルツハイマー病患者の常染色体優性遺伝性アルツハイマー病(ADAD)と比較します(ADNIおよびNACCによって確立されたデータセットを使用)。
  4. 登録された方々から取得した情報全てを統合した統合型データベースの維持を行います。それにより、様々なデータ群の群間比較、群内比較、データ個々の比較ができるようになります。そのデータは簡便な方法で、承認された治験医師に渡されます。

DIANは、ADNIの撮像検査手順に大きく助けられているとともに、ADCS(Alzheimer’s Disease Cooperative Study)によって多大な支援を受けています。この支援は、統一的な基準でデータを取得するというDIANの目標を大幅に推進するものです。すなわち、DIANに携わる施設全てで臨床および認知機能検査の監査が行えるようになり、DIANの検死を伴う症例の神経病理学的評価について統一基準を提供し、さらに、確立されたADNI研究手順を用いて、画像およびバイオマーカーデータの収集と品質管理に対し標準的手法を適用します。

採取試料の特徴(対象)

  • 600名以下の参加者、年齢18歳以上
  • ご家族にアルツハイマー病の病原性変異がある方。親がその疾患を持っていること。なお血縁者に変異が特定されている場合があります(現在は、APP、PSEN1、PSEN2という3つの遺伝子の内1つ)
  • 80%が無症候性で、20%が症候性
  • 無症候性採取試料の50%が変異保因者で、50%が非保因者です(常染色体優性遺伝と一致)
  • 年齢分布として、50%が、親の発症年齢(AAO)から3年以内、30%が親の発症年齢から3年から10年前に発症しています

組み入れ基準

  • あらゆる研究に関連した手順を行う前に、参加者および付帯する関係者からの書面による告知に基づく同意を得ること。
  • 参加者は、>18歳以上で、(臨床または検査によって)常染色体優性遺伝アルツハイマー病の変異が認められる血縁にあり、影響を受けている方の子であること。
  • 参加者は認知的に正常であり、もし認知症を発症した場合でも、介護施設での治療を必要としないこと。
  • 参加者に、両親が同じ兄弟姉妹以外で、研究の付帯的情報源としての役割を果たしてくれる人物2名(最低1名)がいること。
  • 参加者は、小学6年生レベルかそれ以上の英語を流暢に扱えること[注:当初、DIANへの参加者は英語を話す人物に限られていましたが、DIANプロトコルを他の言語に翻訳しています。]。

来院の頻度

無症候性のDIAN参加者は全員、推定発症年齢より5年過ぎた方を除き、1年おきに直接来院していただき診察を受けていただきます。もし経過観察の直接来院を欠席された場合、その参加者は、翌年、経過観察の直接来院を計画する必要があります。

推定発症年齢より5歳以上経過した無症候性の参加者は、直接来院による診察ではなく、遠隔地での診察(電話)を行っていただくことになります。これは毎年行っていただくことになり、研究終了まで続きます。なお、参加者がADAD変異に陽性であると認識し、その情報をコーディネーターや研究スタッフに開示した場合を除きます。この場合は引き続き隔年の直接来院を計画していただきます。

臨床評価においてCDR(Clinical Dementia Rating)が0より高い症候性参加者は、隔年の直接来院を行っていただきます。なお、有用なデータが取得され、参加者の負担が軽減される限りにおいて、研究を継続します。

直接来院を行わない年には、無症候性参加者との電話による経過観察と付帯的情報収集が行われ、認知機能変化について問診が行われます。全ての無症候性DIAN参加者は、その遺伝子変異の状態の認識度合に関わらず、電話による経過観察で認知の低下が確認されたら、直接来院を行っていただくよう案内を受けます。

手順

全参加者は、以下を実施するように案内を受けます。

  • 臨床的評価
  • 認知的評価
  • 遺伝子分析のための血液
  • MRI (3T)
  • FDG PET
  • ピッツバーグ化合物B (PIB) PET
  • タウPET(参加施設でのみ)
  • 脳脊髄液(CSF)採取用の腰椎穿刺と絶食時血液
  • 病理解剖(可能な場合)

臨床的および認知的バッテリーの場合を除き、全ての評価に参加することが望ましいですが、義務ではありません。臨床的評価、MRI、PET PIB、FDG PET、心理測定検査および脳脊髄液の検査は、2〜3日をかけて、または12週間を超えない範囲で数回の来院に分けて実施されます。全参加者は、死亡の場合、病理解剖許可を提出してください。